こんにちは!パーソナルトレーナーの舩本です。

「脂肪を落としながら筋肉を増やすことは可能なのか?」

生理学的には「アンダーカロリー(エネルギー不足)の状態では筋肉の合成は進まない」というのが定説とされてきました。しかし、最新ではその常識を塗り替えつつあります。

特に注目を集めているのが、イスラエルのテルアビブ大学、イフタフ・ゲプナー教授らによる研究です。この研究は、適切なトレーニングと栄養管理を行えば、エネルギー制限下であっても筋肉を維持するどころか、増加させることが可能であるという明確なエビデンスを提示しました。

本記事では、この研究の内容を深掘りし、日々のボディメイクに活かせる実践的な知見を解説します。

1. イスラエル研究の衝撃的な実験結果

この研究では、304名の男女(20歳〜75歳)を対象に、約5ヶ月間にわたる追跡調査が行われました。被験者は全員、1日あたりの摂取カロリーをメンテナンスカロリー(現状の体重を維持するカロリー)から500 kcal差し引いた「アンダーカロリー」の状態に設定されました。

被験者は以下の3つのグループに分けられ、その結果を比較しました。

グループ実施内容脂肪量の変化筋肉量(FFM)の変化
(1) 食事制限のみ運動なし減少2.8kg 減少(激減)
(2) 食事+有酸素週150〜250分の有酸素運動減少1.1kg 減少
(3) 食事+筋トレ週2〜3回の抵抗トレーニング大幅に減少0.8〜0.9kg 増加(成功)

研究の核心: 「食事制限のみ」のグループは、減った体重の多くが筋肉の減少によるものでした。一方で、週2〜3回の筋トレを取り入れたグループだけが、カロリー不足の状態にありながら、脂肪を落としつつ筋肉を増やす「ボディリコンポジション(リコンプ)」に成功したのです。

2. なぜ「週2〜3回」のトレーニングで成果が出たのか

驚くべきは、リコンプに成功したグループが行っていたトレーニングが決して「過酷すぎるもの」ではなかった点です。研究プログラムで設定された内容は、以下のような効率的なものでした。

短時間・高強度の集中型トレーニング

トレーニングの頻度は週に2回から3回、1回あたりの時間はわずか45分程度でした。重要なのは時間の長さではなく、筋肉に対して「機械的な張力(メカニカルテンション)」を適切に与えたことです。

多関節種目(コンパウンド種目)の選択

プログラムの構成は、スクワット、プレス、プルといった、一度に多くの筋肉を動かす多関節種目が中心でした。これにより、短い時間でも全身のホルモン反応や代謝を効率よく高めることが可能となりました。

適正な負荷の設定

負荷は「8〜12回で限界を迎える重さ」を3セットという、筋肥大における標準的な強度が採用されました。過度なオーバートレーニングを避け、かつ筋肉に十分な刺激を与えるこの設定が、エネルギー不足の状態でも筋肉の合成を維持させたと言えます。

3. 栄養戦略:タンパク質摂取の基準

この研究で忘れてはならないのが、被験者のタンパク質摂取量です。リコンプを成功させるためには、単にカロリーを減らすだけでなく、筋肉の材料を確保することが不可欠です。

研究では、被験者に1.5g / kg / day(体重1kgあたり1.5g)のタンパク質摂取が義務付けられていました。例えば体重70kgの人であれば、1日105gのタンパク質です。

アンダーカロリーの状態では、身体はエネルギーを確保するためにタンパク質を分解しやすくなります。この分解を上回るだけの合成を促すために、1.5g / kgという基準値がボディリコンポジションの「最低ライン」であることを示唆しています。

4. 私たちのボディメイクへの応用

このイスラエルの研究成果を、私たちの日常生活やトレーニングにどう落とし込むべきか。

  • Step 1: 適度なアンダーカロリーの設定 急激な減量は筋肉の大量減少を招きます。現在の維持カロリーから300〜500 kcal程度のマイナスを目安にし、緩やかなペースで脂肪を削っていくことがリコンプの条件です。
  • Step 2: 筋トレをライフスタイルの中心にする 有酸素運動は体脂肪燃焼に効果的ですが、筋肉を増やすシグナルは送れません。週に少なくとも2回、大きな筋肉群を狙ったウエイトトレーニングを最優先で実施することが、引き締まった身体への最短ルートです。
  • Step 3: 栄養の質とタイミング タンパク質を体重の1.5倍から、可能であれば2倍程度摂取し、トレーニング前後の栄養補給を怠らないことが重要です。エネルギー不足を補うために、炭水化物を完全に抜くのではなく、トレーニングの燃料として適切に摂取することもリコンプを加速させます。

5. 結論:身体は「必要性」に応じて変化する

私たちの身体は非常に適応能力が高く、置かれた環境に合わせて変化しようとします。単に食べる量を減らすだけでは、身体は「飢餓」に備えて燃費の悪い筋肉を捨て、脂肪を貯め込ようとします。

しかし、そこに適切な負荷(筋トレ)が加わると、身体は「この環境で生き残るためには、筋肉を増やし、脂肪をエネルギーとして燃やすしかない」と判断します。イスラエルの研究は、まさにこの「身体の適応の方向性」を私たちがコントロールできることを証明しました。

ぜひ、この研究結果をモチベーションにして、自分でも変われるんだと信じて食事制限と筋トレに取り組んでみてください!